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およそ5億個の電子を、1インチ程度の距離で、2ギガ電子ボルトまで加速することのできたパワフルな卓上サイズの「加速器」。2ギガ電子ボルトのエネルギーを生成するにはこれまで、サッカー場2つ分の大きさの加速器が必要となっていた。
(Credit: Courtesy of Rafal Zgadzaj)


米テキサス大学の研究チームはこの度、非常にパワフルな卓上サイズの「粒子加速器」を開発したと発表。Nature Communicationsに掲載されている。

チームはこの小型の加速器を使用してすでに、1インチ程度の距離でおよそ5億個の電子を2ギガ電子ボルトまで加速させるのに成功しており、ギガ電子ボルトのレーザープラズマ加速器が世界中の実験室内に標準装備される日に向けた、大きな前進であるとしている。

チームを率いるMike Downer教授によれば、「従来型の加速器で同程度のエネルギーを生成するには、サッカー場2つ分の大きさが必要だった」としていて、今回新しく開発された加速器のサイズはおよそその10,000分の1であることからも、この卓上サイズの加速器が小さいながらいかにパワフルなものであるかがうかがえる。

また、向こう2~3年以内には長さ数インチにして10ギガ電子ボルトの加速器が、10年以内には20ギガ電子ボルトの加速器を開発することができるようになる見込みがあるとDowner教授は述べている。

さらに、現行の2ギガ電子ボルトの加速器で生成される電子は、大型の施設で生成されるような明るいX線に変換することが可能であるとのことで、教授によると、現在科学に利用可能な最も明るいX線源である「X線自由電子レーザー」を駆動させることさえできる可能性があるとしている。

もし、10ギガ電子ボルトを越えるような卓上サイズのX線レーザーが利用可能になれば、化学や生物学の分野においても変革をもたらし得るだろうという。わざわざ大型の施設にまで足を運ぶ必要なく、物質を分子レベルで高精度かつフェムト秒※の時間能で精査することができるようになるからだ。

(フェムト秒の時間能であれば、例えば、生きたサンプル内における単体のタンパク質分子がもつ原子構造や化学反応などを具に観察することができると言われている)

※ 1フェムト秒=1-15秒(1000兆分の1秒)

教授によれば、10ギガ電子ボルトを越える加速器が実現するのは時間の問題であるとしている。

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加速が発生する、真空室の内部。レーザービームは右側からやってくる。中央部で電子が加速される。
(Credit: Neil Fazel)


チームは今回、ほんの束の間ではあるが非常に強力なレーザーパルスを密度の低い気体に向けて打つ、「レーザー・プラズマ加速(laser-plasma acceleration)」という手法を使用。世界で最も強力なレーザーの一つである「Texas Petawatt Laser」が使われた。

レーザーが気体内に入ると気体はイオン化され、プラズマがつくられて電子が分離。プラズマから飛び出して光の速度並に加速される仕組みであるという。


Phys.org, "Particle accelerator that can fit on a tabletop opens new chapter for science research"
http://phys.org/news/2013-06-particle-tabletop-chapter-science.html